「ハノーバーメッセ 2018」視察レポート

世界最大規模の産業展であるハノーバーメッセ(ドイツ)を見学して参りました。スケジュールの関係上、一日しか滞在することができませんでしたが、その中で学んだこと・感じたことをレポートとしてまとめさせて頂きます。

ハノーバーメッセ 2018
ハノーバーメッセ 2018

ハノーバーメッセは東京ビッグサイトの約5倍の面積を持つ見本市会場で、全世界から約20万人の来場者数を誇り、毎年開催されます。全ての産業を網羅したイベントであり、一日という限られた時間では全てを網羅することは不可能なので、予め注目すべきテーマを「IoT(Internet of Things)」と「協業ロボット」という2つにし、それらを中心に見学しました。

まとめ

ハードメーカーからソフトメーカーへ シーメンス社
ハードメーカーからソフトメーカーへ シーメンス社

ドイツ政府が提唱する製造業のデジタル化コンセプトである「インダストリー4.0」の中心企業の1社であるシーメンスのブースは、ハノーバーメッセの中でも最大規模でした。 同社はPLCなどのハード会社というイメージでしたが、実際のサービス内容を聞くとソフト会社へと変貌を遂げていました。ソフト会社への展開の裏には多くのM&Aがあったそうです。

強く印象に残った商品は2つのソフト。「現実世界をデジタルで再現する技術”Digital Twin”」と「IoTプラットフォーム”Mind Sphere”」です。前者のデジタルツインは設備計画のラインをデジタル上で実現をし、一連のライン製造能力・動線などに問題がないかを設備導入前に細かなシュミレーションができる技術です。これにより、新規の設備が問題なく稼働できる準備ができるそうです。パソコンの画面の上で仮想の工場ラインが高速で稼働し、設備ラインに問題がないかを検証している様はコンセプトの説明を受けてもよくわからないというのが素直な感想です。

後者のマインド・スフィアは、シーメンス社がIoTのプラットフォームとして、世界に広げようとしているIoTのクラウドツールです。同様のプラットフォームはGE(ゼネラルエレクトリック社)もプレディックスというサービスがありますが、こちらはGE社製のジェットエンジン・医療機器・発電プラントをつなぐことを前提に考えているようです。一方のマインドスフィアはシーメンス製品以外のものにも門戸を拡げており、「あらゆる機器をインターネットにつなげる」という考えに基づいています。オープンソースという点ではGoogle社のアンドロイドに近いようです。アマゾンやマイクロソフトなどとのパートナー化を推進しており、独自路線でいくのではなく、あらゆる企業と提携して最適な「IoTのプラットフォーム」を目指そうとする気概を感じました。

事例としては、ドイツのコンベアメーカーはマインド・スフィアを導入し、そのコンベアが故障する前に顧客に異常を知らせるサービスを開始。製造業が単なる「モノ売り」ではなく、「サービスを売る」という変革に貢献していました。

マインドスフィアは従量課金制(月額支払い)であり、中小企業でも導入しやすい価格設定のようです。「何ができるかわからないがIoTに挑戦したい」という中小企業向けです。

IoTにより多品種少量生産を実現 ボッシュ社
ボッシュ社

ボッシュはSAPやシーメンスと並び、インダストリー4.0の中心企業の1社です。同社は世界的な自動車部品メーカーとして知られるが、同時に工場FA(ファクトリーオートメーション)システムのメーカーでもあり、電動ドライバーなどの総合電動工具メーカーでもあります。ブースでは同社のIoTモデル工場をコンセプトに、IoTによってつながる工場、その結果、多品種少量生産であっても従来よりも極めて短いリードタイムでモノづくりが行える点を強く訴求していました。

試作から量産の時代へ 3Dシステムズ社

従来は材料が高いことと、加工時間を要することから試作用途が中心でしたが、最近では航空機部品や医療機器部品など高付加価値部品を中心に量産化が進んできているようです。
世界トップクラスのシェアを持つ3Dシステムズ社のブースでは、3Dプリンタを並列し、3Dプリンタによる無人量産工場のコンセプトを発表していました。加工時間を要するとしても、3Dプリンタの台数を揃えることでカバーするようです。

試作から量産の時代へ 3Dシステムズ社

3Dプリンタを並べた量産工場のイメージ

人と「一緒に」働くロボット KUKA社
協業ロボット

今回のハノーバーメッセの見所の1つは協業ロボットでした。協業ロボットは従来の産業用ロボットと異なり、人と一緒に働けるコンセプトのロボットです。
従来の産業用ロボットは「人ができない仕事をさせる」ことが目的ですが、協業ロボットは「人が行っている仕事を置き換える」ことが目的です。協業ロボットのポイントとして、次の4つを挙げることができます。

① 人と働ける様な高度な安全対策を実施
② 操作が容易
③ コンパクトで可搬重量が5~10kg
④ 早期の投資回収を志向

ドイツのKUKA社では、協業ロボットがビールを注ぐデモを実施。ABB社では、相腕ロボットによる協働ロボットのデモが安全柵無しで行われていました。KUKA社は中国企業によって2016年に買収されたことからも中国企業の勢いと、今後伸びるマーケットなのだなと感じました。少子高齢化の進む日本でこそ、このような需要はあるでしょうから、日系企業の奮闘にも期待したいところです。弊社においても人手が足らなくなる製造工程がありますので、あらゆる角度からこのようなロボットを今後検討したいと思います。

最後に
現地会場で飲んだ「スペッツィ」

生憎の悪天候でかなり寒い中でのハノーバーメッセ初参加でしたが、展示会場の熱気で丸一日会場内を歩いていてもさほど苦にはなりませんでした。
ドイツ政府が提唱する「インダストリー4.0」の御旗のもと、IoT関連の活気が特に溢れていました。この活気はRFID(電子タグ)が勃興してきた2008年前後の盛り上がりに似ていますが、ドイツ企業の本気度が各所で見られたことから、「IoTが普及するならドイツ企業が覇権を握るのかな」と思わせるには十分な勢いでした。産業をまるごとデジタル化するというコンセプトで価格競争力の向上と付加価値の高いサービス提供に力をいれていると認識しました。
ドイツという国は日本と同様に中小企業(ミッテルシュタント)に支えられた国です。IoTのような最先端技術を支えるのは大企業ですが、その裏方にはきっと多くの中小企業も介在しているのでしょう。また、その中小企業こそIoTを身の丈にあった範疇で導入すれば面白い展開を図れるのではないかとも思います。普及するのはまだ先なのかもしれませんが、黎明期のIoTを肌で感じることができました。

現地会場で飲んだ「スペッツィ」はペプシとファンタを混ぜたような不思議な味がしました。
来年もまたここへ飲みに来ようと思います。