迷路シール袋

畜産の未来を左右する発酵TMRへの導入について

発酵TMR(TMR=混合飼料)は畜産業界の発展に貢献する新しい飼料。通常の飼料とは違い、発酵させることで飼料としての質が上がり、さらに保存にも優れているのが特徴です。しかし、製造過程でガスが発生し、飼料を入れる袋が破れてしまうなどの課題が発生しました。その解決策として、導入されたのがシコーの迷路シール袋なのです。

広島県立総合技術研究所畜産技術センター

「飼養技術研究部」と「育種繁殖研究部」という2つの部門に分かれ、乳用牛や肉用牛に関するさまざまな研究開発や技術支援を行なっています。明治33年(1900年)に国立最初の種牛牧場(七塚原種牛牧場)として創設され、優れた外国品種を輸入し在来牛の改良に活用するなど、古くから畜産における重要な研究を行なっている施設です。

発酵TMRが広まることで、畜産業界がどう変わるのか?

発酵TMRが広まることで、畜産業界がどう変わるのか?

畜産技術センター 飼養技術研究部
部長 河野幸雄様

河野様:広島県立総合技術研究所畜産技術センターでは、飼料の原料となる干草や穀物などをバランス良く混ぜて発酵させた「発酵TMR」の研究を行っています。人間が食べる発酵食品と同じように乳酸菌によって発酵させるので安心して牛たちに食べさせることができ、保存性が高くなるのが最大の特徴です。2015年、全国農業協同組合連合会 広島県本部畜産部から「発酵TMRを1個20kgで女性でも持ち運べるくらいの小袋TMRを研究して欲しい」という依頼をいただきました。そもそも発酵TMRは良い飼料なのですが、小規模農家の方々には使うのが難しかったのです。というのも、従来の発酵TMRはたくさんのエサが必要な乳牛に使う場合がほとんど。1個400〜500kgの包装単位で流通しているのが現状です。食べる量が少なく、育てている頭数も少ない肉牛の農家の方々には、その量が多すぎるというのが長年の課題でした。そのために発酵TMR用の小袋が必要なのです。

発酵TMRを入れる袋が持っていた課題とは?

発酵TMRを入れる袋が持っていた課題とは
発酵TMRを入れる袋が持っていた課題とは

河野様:発酵TMR用の小袋開発においては、さまざまな課題を解決しなければなりません。そもそも発酵TMRを作るには、乳酸菌が住みやすい環境を作ることが必要です。その際、一番気をつけることは空気の遮断。乳酸菌のライバルとなる雑菌には、空気がないと窒息する好気性菌と空気がなくても生存できる嫌気性菌がいます。乳酸菌は嫌気性菌なので、空気があると好気性菌に負けてしまいますが、空気がない状態になると好気性菌は死滅。乳酸菌が活発に増殖して、乳酸菌自身が作りだす乳酸などによって他の嫌気性菌を抑えるのです。この発酵の過程で課題が発生します。

袋を完全に密封した状態で2〜3週間発酵させるのですが、密封後の早い段階で好気性菌が二酸化炭素を発生させて袋が膨張し、破れてしまうということが起きてしまうのです。たとえ破れなくても、袋が膨張してしまうと荷崩れが起きるのでパレット積みによる保管や流通ができません。また目で見て気づかないくらい小さな穴でも、そこから空気が入ってしまうと袋の中の発酵TMRが腐ってしまいます。これらの課題を解決するためには、密封状態を維持しながら内部で発生するガスを袋の外に排出できるようにしなければなりません。気体が一方向のみに流れるように、市販されている単方弁を袋に貼ってみるなど試行錯誤したのですが、コストが高いことや空袋がかさばるなど新たな課題も発生しました。その時、全国農業協同組合連合会 広島県本部畜産部から紹介していただいたのが、単方弁の機能をシールパターンのみで実装した「シコーの迷路シール袋」でした。

シコーの迷路シール袋を導入した効果は?

シコーの迷路シール袋を導入した効果は?
シコーの迷路シール袋を導入した効果は?

河野様:導入して驚いたのは不良品が全くなく、廃棄量がゼロだったことです。2016年8月から2017年7月の1年間、迷路シール袋を使った発酵TMRの運用実験を実施。実験には肉牛3頭を使って、迷路シール袋に入れた発酵TMRを2〜4週間ごとに製造し、2〜4週間発酵させた後、牛に与える直前に開封して1日1頭あたり11〜14kgを食べさせました。1年間続ける中で、目標をカビや腐敗の発生率や廃棄量を5%以下に設定していたのですが、それも杞憂に終わりました。不良品は全くなく廃棄量はゼロで、牛3頭も通常の飼料よりも食いつきが良く健康状態も良好という結果に。もちろん袋の膨張もなく、何よりも驚いたのはシンプルな加工なのに私たちが抱えている全ての課題を解決したことです。最初に提案してもらったサンプルの時点で完成されていました。なので、現段階まで袋自体は何の改良もしていません。これからは実用化を目指して一緒に取り組んでいきたいと考えています。運用実験の結果、迷路シール袋が発酵TMRにふさわしい袋だと確信し、研究成果を関西畜産学会大会でも発表し、多くの方々から興味を持っていただきました。肉牛の農家の方々は高齢化が進んでいるので、軽量化できた飼料を流通して畜産業界を元気にしていきたいです。

発酵品質のグラフ

これからの発酵TMRの展開について

これからの発酵TMRの展開について
これからの発酵TMRの展開について

河野様:1年間の運用実験を経て、全国農業協同組合連合会 広島県本部畜産部からいよいよ「小袋の発酵TMR」として近々に実用化される予定です。発酵TMR以外にもシコーの迷路シール袋はさまざまな用途でも使えると感じたので、これからも可能性ある取り組みを一緒にやっていきたいです。